2013年4月29日月曜日

韓国:大企業の業績悪化、円安ショックはこれから

_



朝鮮日報 記事入力 : 2013/04/29 08:27
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/04/29/2013042900525.html
 
【社説】大企業の業績悪化、円安ショックはこれから

 韓国経済は第1四半期(1-3月)に予想を上回る前四半期比0.9%の成長を示したが、主な大企業の業績はさらに悪化した。
 現代自動車は第1四半期の売上高が前年同期比6%増の21兆3700億ウォン(約1兆8800億円)だったにもかかわらず、営業利益は10.7%減の1兆8700億ウォン(約1650億円)にとどまった。
 起亜自動車は売上高が6%減の11兆800億ウォン(約9750億円)、営業利益は35%減の7000億ウォン(約620億円)だった。
 円安で価格競争力が低下したことに加え、労組が週末特別勤務を拒否したことによる生産への影響が重なった。

 鉄鋼業界ではポスコの売上高が10.6%減、営業利益が4.7%減だったほか、現代製鉄も売上高、営業利益がともに20%以上低下した。
 石油精製、石油化学のSKイノベーションも売上高と営業利益が4-5%減少し、ロッテケミカルは営業利益が42%減少した。
 建設業界は2-3年前の海外でのダンピング受注による後遺症で、GS建設が5355億ウォン(約470億円)、サムスンエンジニアリングが2198億ウォン(約193億円)の大幅な営業赤字を記録し、市場に衝撃を与えた。

 例外だったのは、サムスン電子の売上高が16.8%増の52兆8700億ウォン(約4兆6500億円)、営業利益が54.3%増の8兆7800億ウォン(約7730億円)と、第1四半期としては過去最高だったことだ。
 しかし、スマートフォン(多機能携帯電話端末)事業を担う通信部門が同社の利益全体の74%を占め、偏りが大きかった。
 テレビ、冷蔵庫、エアコンなど消費者家電部門の営業利益は減益だった。
 サムスン電子も世界的な景気低迷と円安による影響から逃れることはできなかった。

 韓国の大企業の業績は当面好転が見込めない。
 金仲秀(キム・ジュンス)韓国銀行総裁は先ごろ「円安現象はこれからがむしろ問題だ」と述べた。
 自動車、鉄鋼、家電、石油化学など韓国の主力産業の輸出が円安の壁に阻まれ、企業業績がさらに悪化する可能性があるためだ。
 中国の経済成長が大幅に鈍化しているほか、米国の第1四半期の成長率も期待に及ばないなど、世界経済の回復が順調とは言えないことも懸念材料だ。

 第1四半期の成長率は予想を上回ったが、このまま推移すれば、成長の勢いを失うリスクが高い。
 韓国政府は企業投資の活性化策を含め、景気回復に向けた政策的対応を急がなければならない。
 政界も韓国経済の危機状況を直視し、追加補正予算の処理をはじめ、景気浮揚を後押しすべきだ。
 今はいかなる政策課題よりも景気回復が優先だ


JB Press 2013.04.30(火)  玉置 直司
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37687

アベノミクスに怯える韓国経済:低成長下の円安・ウォン高、
北朝鮮危機より深刻?

 韓国のメディアに安部晋三首相が登場しない日はない。
 靖国問題など政治や歴史問題を批判的に報道する例もあるが、「アベノミクス」が圧倒的な関心事だ。

 急速に進む円安・ウォン高で産業界からは悲鳴も聞こえる。
 低成長が続く韓国経済にとって、衝撃的な政策なのだ。

 ソウル中心部のショッピング街である明洞(ミョンドン)。
 筆者はほぼ毎日のようにここで昼食をとる。
 日本人観光客が必ず訪れる場所でもあり、以前ならあちこちで日本語を話す観光客がいた。
 昼食後、コーヒーショップで注文をしようとしたら、並んでいた人が全員日本語で話していたこともあった。
 ところが、昨年秋以降、日本語を聞く機会ががくんと減ってきた。

■激減する日本人観光客

 2012年8月に李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)が突然、竹島(韓国名・独島)を訪問して日韓関係が悪化したことを機に減少に転じた日本からの観光客は、その後も回復するどころか、減り続けている。
 ある観光会社の社長は「円安・ウォン高のせいだ」という。

 韓国政府の統計によると、2012年8月の日本人入国者数は35万人だった。
 ところが、9月は30万人、10月は27万人、11月は25万人、12月は23万人、2013年1月は21万人と一本調子で減り続けている。

 3月は春休みの旅行ピーク時にあたり29万人となったが、2012年に比べると20%の減少だった。
 日本人に支えられてきたホテルや商店は大きな影響を受けている。

 「朝鮮日報」(2013年4月27日付)に興味深い記事が載った。
 円安・ウォン高のあおりで、「ビッグマック」などの価格の「日韓逆転現象」が起きているという。

■ビッグマックやスタバの値段に「日韓逆転現象」

 この記事によると、4月25日現在の「1円=11ウォン」という為替レートで計算すると、「ビッグマック」のウォン換算価格は、韓国3900ウォン、日本3520ウォンとなる。
 有名チェーンのラーメンや回転寿司、「スターバックス」や「ユニクロ」の価格でも同じようなことが起きているという。

 2009年に1円=16ウォンにまで円高に振れた頃に比べると、急激な変化だ。

 旅行客は為替レートに敏感だ。
 この記事によると、2012年第4土曜日に仁川-成田路線を利用した大韓航空便の日本人客は502人だったが、2013年の同日は236人で半減以下になったという。
 その分、韓国人の利用客は急増している。

 「日本の量的緩和の影響は北朝鮮リスクよりも大きい」――。
 2013年4月18日、米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で韓国の玄旿錫(ヒョン・オソク)経済副首相兼企画財政相はこう訴えかけた。

 ミサイル発射、核実験、韓国や米国への攻撃か――。
 世界中が注視している北朝鮮の動きよりもさらに「リスクが大きい」との発言には出席者もさぞ驚いたことだろう。

 例えはともかく、「アベノミクス」の衝撃が大きいことは間違いない。

 「海外のプラント商談で日本企業に競り負けた」
 「中国に半導体製造装置を売り込んだが、日本企業よりずっと価格が高く勝負にならなかった」
 「部品を納入していた日本企業から価格を20%以上引き下げるよう要請された」――。
 韓国の産業界ではあちこちでこんな声が上がっている。

■現代自動車の「3重苦」

 「現代自動車を直撃する3重苦」。
 最近、韓国メディアでは、こんな表現がよく使われる。
 つい数カ月前まで「5重苦」とか「6重苦」というのは日本企業が抱える苦悩のことだったが、一気に状況が変わりつつある。
 急速なウォン高で、海外市場で現代自動車の苦戦が目に付き始めた。
 特に、円安の恩恵を受ける日本車の攻勢を受ける米国市場では、大規模リコール問題なども重なって2013年に入ってシェアをじりじり落としている。

 2013年4月25日に現代自動車が発表した1~3月期決算は、連結営業利益が前年同期比11%減の1兆8685億ウォンだった。
 営業利益が前年同期比でマイナスになるのは、2012年7~9月期以来、これで3四半期連続となる。
 傘下の起亜自動車の2013年1~3月期決算の営業利益も3四半期連続で前年同期マイナスになった。
 1~3月期の営業利益は前年同期比35%減の7042億ウォンだ。

 労使問題のこじれによる韓国内での生産減少の機会損失も打撃だったが、
 「円安・ウォン高の影響も間違いなく受けた」(韓国の銀行役員)。
 快進撃が続いた現代自動車グループに黄信号が出てきた
 円安・ウォン高が韓国企業にとって打撃となるのは、主力市場で日本企業の製品の価格競争力が高まるからだ。
 自動車はその典型で、早くもその影響が出始めているという。

 もちろん、まだ、ほとんど影響を受けていない企業もある。

■独り「別世界」を行くサムスン

 サムスン電子の2013年1~3月期の決算は営業利益が前年同期比54%増の8兆7800億ウォンとなった。
 スマートフォンの販売が世界中で急増したことが最大の原因だ。
 1~3月期のスマホの世界販売台数は前期比10%増え、6800万台に達している。

 サムスン電子のある役員は
 「円安・ウォン高については常に警戒している。
 経営上マイナスにはなるが、今は、スマホの販売を今後もどれだけ伸ばすことができるかで頭が一杯だ」
と話す。

 サムスン電子の4~6月期の営業利益は初めて10兆ウォンを超える可能性もあり、今のところは「サムスンだけは別世界を行っている」(韓国紙デスク)状態だ。

 だが、韓国経済全体となると、「アベノミクス」は大きな脅威だ。

 韓国経済は過去にも急速な「円安・ウォン高」に見舞われたことがある。
 1990年以降でも、1995~96年前後、2005~07年前後に円安・ウォン高に振れたことがある。
 輸出依存度が高く、多くの製品で日本企業と競合する韓国の産業界にとって、円安・ウォン高はマイナスに働く。

 「過去2回の円安・ウォン高に比べて韓国の産業界への打撃は今回がずっと大きい」。
 ある財閥役員はこう語る。

■過去の「円安・ウォン高」局面より打撃が大きい理由

 その最大の理由は、過去2度の円安・ウォン高局面では韓国経済が比較的好調だったことだ。
 1990年代半ばには年率8%前後の経済成長が続いた。
 2005~07年も5%近い成長を持続していた。
 韓国は貿易依存度が高く、これだけの経済成長が可能だったということは、それだけ輸出先の主要国の経済も好調だったと言える。
 だから、円安・ウォン高になっても何とかしのぐことができた。

 これに対して今回は、低成長期での円安・ウォン高なのだ。



 現代自動車の決算発表と同じ日にあたる4月25日、韓国銀行(中央銀行)は1~3月期の実質国内総生産(GDP)を発表した。
 実質GDP成長率は前期比0.9%。事前の予想よりは多少高かったが、これで2010年10~12月期以来、8四半期連続でゼロ%台の成長になってしまった。
 韓国紙デスクは「事前の予想より高かったとはいえ、まったく喜べる数字ではない。
 前期(2012年10~12月期)の数字があまりに低かったのでちょっと上回っただけで、1~3月期のGDP統計が意味することは、8四半期連続でゼロ%台成長という低成長が持続していることだ」
と解説する。

 韓国の産業界が特に警戒しているのは、円安・ウォン高の影響が出てくるのがこれからだということだ。
 大手メーカーの社長はこう話す。
 「円安・ウォン高の本格的な影響はまだ出ていない。
 世界市場で日本製品に対する韓国製品の競争力がじわじわと落ちている。
 円安で利益を急増させている日本企業が今後、世界市場で攻勢に出るのも必至だ」

 「サムスンを除くと韓国企業の利益は低迷しており、今後、円安・ウォン高がボディブローのように利いていくる」

■ボディブローのように利いてくるのはこれから

 「円安・ウォン高は北朝鮮リスクよりも深刻だ」と語った玄旿錫経済副首相兼企画財政相は4月25日に国会で、
 「円安などもあって、景気はどんどん悪化している」
と述べた。

 4月の金融通貨委員会で基準金利引下げに反対して金利凍結を決めた韓国銀行の総裁も、最近になって
 「円安は今からが問題だ。韓国経済は相当の影響を受けるだろう」
と「円安の脅威」を繰り返し強調し始めた。

 かつて李明博政権時代に、日本企業は「デフレ下の円高」に苦しめられた。
 一転して今度は韓国企業が「低成長下のウォン高」に怯えている。






【迷走する韓国 】


_