2013年4月9日火曜日

韓国経済:奇形の構造、サムスン電子1社で全上場企業の利益の36%







JB Press 2013.04.08(月)  玉置 直司
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37512

とどまることを知らぬ韓国大財閥の規模拡大
サムスンと現代自の2強、資産規模・利益でさらに突出

 韓国公正取引委員会は2013年4月1日、毎年恒例の大企業グループの資産規模現況を発表した。
 上位の企業グループの顔ぶれはほとんど変わらなかったが、李明博(イ・ミョンバク)政権が発足した直後の5年前の発表内容と比べると、上位グループの規模がさらに急拡大した。
 サムスンと現代自動車グループは、利益面でも突出した存在になった。

 資産規模上位20グループの顔ぶれは、5年前とほとんど変わっていない。 
 サムスングループは、全国に広大な土地や資産を持って「永遠の1位」と言われていた韓国電力公社に代わって2005年に資産規模トップに躍り出て以来、9年連続で首位の座を守った。

■韓国産業界を支配するオーナー経営の財閥と公企業

 上位20グループには、日本でもお馴染みの名前がずらりと並ぶ。
 そうでないとすれば、公企業だろうか。

 2位には韓国電力公社、3位には大韓住宅公社と韓国土地公社が合併してできた韓国土地住宅公社が入った。
 上位20グループに公企業5グループと農協が入った。



 有力公企業が財閥をしのぐ資産規模を持っていることに対しては「民間企業の活動領域を狭めている」という指摘もある。

 一方で、公企業以外の大企業グループのうちオーナー家が支配していないのはポスコ、KT、STXだけ。

 このうちポスコとKTは旧国営企業で、「オーナー支配の財閥に対抗できるのは公企業だけだ」としてその必要性を指摘する声もある。

 1つ言えることは、韓国の産業界を支配しているのはオーナー経営の財閥と公企業だということだ。

■李明博政権下で「大企業偏重」が加速

 李明博政権発足(2008年2月末)直後の2008年の発表で上位20に入っていたグループで今回ランクから外れたのは、公企業を除くと錦湖アシアナグループとハイニックス。
 このうち、ハイニックスはSKグループに買収された。

 錦湖アシアナグループは、大宇建設と大韓通運を相次いで買収し、大韓航空を傘下に持つ韓進グループを一時は資産規模で抜き、公企業を除く「10大財閥」の仲間入りを果たした。

 しかし、無理な買収で財務内容が一気に悪化した。
 オーナー兄弟間での紛争も起きてグループは分裂し、2013年の資産規模は17兆ウォン(1円=12ウォン)と5年間で10兆ウォン減少して25位に落ちた。

 李明博政権は「親大企業・財閥政策」で韓国経済全体を成長させようとした。
 法人税引き上げ、ウォン安、低価格の電気料金、活発なFTA(自由貿易協定)戦略・・・。
 数々の大企業支援策を打ち続けたが、その効果があったからか、上位の大企業は目覚ましい成長を遂げた。

 サムスン、現代自動車、ロッテ、ポスコなどの大企業グループは5年間で資産規模を2倍以上に増やしている。
 李明博政権の5年間での年平均経済成長率が2.9%だったことを考えれば、大企業や財閥に偏った成長だったと言えなくもないだろう。

 特に上位グループほどその成長率が高かった。
 公企業を除く上位30大企業グループの資産規模合計額に占めるサムスン、現代自動車、SK、LGの4大財閥の資産規模合計額の比率は、2009年には49%だった。しかし、2013年には55%を超えている。

■4大財閥が利益の8割を占める極度の集中

 4大財閥の力の大きさは利益面ではさらに突出している。

 公企業を除く30大企業グループの純利益合計額に占める4大財閥の純利益合計額の比率は、2011年には58%だったが、2013年には79.8%にまで跳ね上がった。

 4大財閥で利益の8割を占める集中ぶりだ。

 4大財閥とは言うが、中でもサムスンと現代自動車グループの2強の利益は、他グループを圧倒している。

 2012年のグループ全体の純利益額は、サムスンが29兆5370億ウォン、現代自動車が13兆3960億ウォンで、この2強だけが10兆ウォンを超える利益を出した。

 3位以下は、混戦模様だ。 
 グループの純利益額が2兆~4兆ウォンの間に、SK、ポスコ、ロッテ、LGが並んでおり、これを小差でGSと現代重工業が追っている。

 サムスングループと現代自動車グループの利益額も2倍以上の差がある。
 さらに2位の現代自動車グループと3位のSKグループの利益額も3倍の差がついている。
 李明博政権5年間で、最も成長を遂げたのも、サムスンと現代自動車グループだったと言えるだろう。

 それにしても上位財閥の規模はすごい。
 先日、韓国銀行(中央銀行)は2012年の韓国の国内総生産(GDP)が1272兆ウォンだという暫定数値を発表した。

 サムスングループの資産規模や売上高は、GDPのざっと25%に達する。
 サムスン、現代自動車、SK、LGの4大財閥の2012年の売上高の合計はGDPの58%を占めている。

■サムスン電子1社で全上場企業の利益の36%

 もっとすごい数字もある。
 2013年4月2日、韓国取引所と韓国上場社協議会は2012年の上場企業決算の分析結果を発表した。
 前年の決算との比較が可能な上場企業499社の純利益の合計額は65兆759億ウォンだった。

 これに対してサムスン電子の純利益は23兆8453億ウォンで、同社だけで全上場企業の利益の36.8%を叩き出した。

 サムスン電子に現代自動車の純利益(9兆562億ウォン)を加えると、全上場企業の純利益の51.3%にまで達してしまう。

 2社の利益が韓国の全体の上場企業の利益の半分以上を占めるというのは、かなりいびつな構造だとも言えるだろう。
 もう韓国では「上場企業全体」の数字は、あまり意味がない。
 それほどまでに2強の突出ぶりはすさまじいのだ。

 李明博政権は、財閥を牽引役にして経済を成長させようとした。
 上位財閥は狙い通りに大きくなってくれたが、庶民層への波及効果や雇用増加効果は思ったほどではなかった。
 「経済力の集中」が結果として進んでしまい、国民の失望を招いた。

 では、どうすればよいのか。
 朴槿恵(パク・クネ)政権は、「国民の幸福」「経済民主化」を掲げ、中小企業の振興や福祉の拡充を重視している。
 方向が間違っているわけではないだろうが、これだけ経済力が財閥・大企業グループに集中してしまった中で、その舵取りはまったく容易ではないだろう。





【迷走する韓国 】


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